文化継承セミナー「私の世界は私の言葉でしか創れない」
~あなたの世界と私の世界をつなげる「言葉」を丁寧に観察しましょう~
母国語を大切にできない国は滅びる。そう聞いたことがあります。ウィトゲンシュタインは、「私の言語の限界は、私の世界の限界を意味する」と述べました。藤塚さんのお話を聞くたびに、改めてこれらのことを痛感します。
私たちを取り巻く環境に目をやると、スマホの普及により「言語の限界」にも気付けない仕組みの中、危機感を感じることなく暮らしが成り立ち、一見便利さを享受しているように見えますが、語彙の少ない子供たちのスマホありきの生活は、それと引き換えに何か大切なものが奪われていくような漠然とした不安が感じられてなりません。
何をすればよいのか、考えていく過程で、学校教育の危うさにも気付くことになり、ますます何とかしなければ…という思いの中、藤塚さんに出会い、この国を母国として生きていく人の基本として、まずは「言葉の力」を知り、「言葉」を大切にする文化を取り戻さなければならないと考えるようになりました。言葉の持つ力を知ることは、豊かな人生を送るきっかけになり、その実体験は、文化の継承という豊かな尊い活動に繋がっていくものと考えます。
義務教育がそこを疎かにしている現状ですが、少しでも取り戻す機会を持てるように、このセミナーは企画されました。



このセミナーの3つの柱です。
・私とあなたは見ている世界が違うことを理解する。
・自分の気持ちを丁寧に言語化し、「言葉」にする。
・言葉は多面体なので色々な意味があることを分かった上で、伝えることを諦めない。
日 時:①令和7年 7月12日(土)13時~16時30分
②令和7年12月13日(土)13時~16時30分
参加費:大人 4000円・子供 1000円(子供同伴の大人は2000円)
定 員:10組
締 切:それぞれ3日前まで

元高校教師(国語)
藤塚 南里 氏
ふじつか なんり
元中学国語教師・元高校国語教師
【コラム】
「国語を取り戻す」
電車の中などでの何気ない会話に違和感を感じることが増えてきたように思います。
その言葉で自分の思いを伝えられているのか、その聞き方で相手の思いを受け取れているのか…
ハッとして、自分はどうなのか振り返ることもしばしばです。
英語圏で自分の思いを伝えるには、英語を使って自分を表現しなければなりません。語彙が乏しかったり、言葉の選択を間違えたりすれば、自分の伝えたいことが正しく伝わらないことが明白だからか、多くの人英語を習得したいと考えているようです。
しかし、これは英語に限らず、日本語でも同じことが起きるのではないでしょうか。
母国語を同じくする日本人同士であっても、日本語を正しく扱えないと、言葉の通じない国で心細い思いをすることと同じことが起きることは明らかです。
現に、語彙が乏しいため自分の考えを表現できず人に言葉で伝えることを諦めてしまう、言葉の選択で誤解を生んだことから会話が怖くなった、など、同じ母国語をもつ者同士のコミュニケーションであるにもかかわらず苦手意識を持つ人が増え、社会生活にまで影響していることがわかります。
母国語を大事にできない国は滅びる、と聞いたことがあります。
ヴィトゲンシュタインは「自分の言語の限界は自分の世界の限界を表す」とも述べています。
ヴィトゲンシュタインの言うように一人一人の世界がどんどん小さくなれば、国も小さくなり、いずれは滅びる。こんな当たり前なことをなんと疎かにしてきたことかと、看過できない状況に危機感を募らせているところです。
学校での国語の時間を思い返してみると、試験というゴールに向かうために「解」のある勉強を積み上げていく方法を主とし、言葉や文字を使った「表現」に時間を取ることがどんどん削られてきたように思います。
もちろん、学校だけが文章や表現を習得する場ではありません。家庭や地域でそのような能力開発の機会があればよいのですが、核家族化、共働き、塾や習い事、親も子供もとにかく忙しい現代、その受け皿となるには厳しい現実があります。
文部科学省は小学校からの英語授業を始めていますが、母国語である日本語を巧みに使える感性教育がある程度完了したところに外国語を載せないと、日本語力を超える外国語を獲得できるはずがない、とは思いませんか。国語力の低下が子どもたちの人生に及ぼす影響を考えると不安を感じます。
英語圏の人と話せると世界が広がることは間違いないのですが、母国語で多くの人たちと豊かな会話ができ、四季が巡る日本で五感と抱き合わせに獲得した語彙を人と共有することは、世界に誇れる豊かな文化であると思います。
五感で育まれた言葉、その力を再確認し、言葉で伝え、言葉で癒され、言葉で調和を目指す、そんな民族として生きていきたいものです。