ワークショップ「衣~染める、織る、績み紡ぐ」
熊野校にて、自然の中で自らの「衣」をつくるワークショップを開催します。
「織る」「染める」「績み紡ぐ」を体験できます。織は「腰機」、染は「ベンガラ染め」です。
人の健康は、医療以前のもっと上流で語られるべきであり、それには衣食住を整えることが大前提であると考えます。ようやく食の安全が見直されつつある現代でも、「衣」の安全はまだまだ立ち遅れています。
本来の衣服の役割は皮膚を保護するもので、薬効のある植物で染めて薬としても用いていたものです。薬を飲むことを服用と言いますが、その語源は薬効成分を染み込ませた「服」を薬として「用」いたから「服用」というのだそうです。そう考えると皮膚という吸収器官をどのような布で覆うのかは、私たちの健康にとても重要なものになります。
流行を意識した装いを手軽にできるようになった現代、手軽に購入できる衣料品は、また気軽に廃棄され、日本の衣料廃棄物は年間50万t を超えるともいわれています。ところが日本の服の自給率は2%、騒がれている食料自給率より桁違いに深刻な状況です。日本にその技術や資源がないのであれば輸入も致し方ありませんが、戦前までは産業として成り立ち、高い品質と技術があった日本のこの現状は残念でなりません。
高品質の日本製の服を手に入れることが難しくなってしまったということは、これまで日本にあった繊維業に関する農や工場が縮小や廃業に追い込まれつつあり、技術や文化の継承は大きな危機を迎えているということになります。
「衣服」の役割と機能を考えた時に、製造過程をトレースすることもできない衣服を身につけるこの状況は、環境保護や文化の継承問題だけでなく、人の健康面においても、豊さとは逆行した動きであると危機感を覚えます。
衣の健康をともに学び楽しみましょう。

レクチャー:錦織野乃子
にしこおり ののこ
京都芸術大で染織を学ぶ。
経皮吸収についての警鐘と手仕事を通じた文化の継承をライフワークとしている。
人といのちの自然学校の染織部門(葛布織、機織、ベンガラ染)担当。

1.機織りワークショップ in 熊野
日本で使われてきた機台腰機=いざり機の復活とその技術の復興を図ります。

東北地方で使われてきた地機、いざり機、腰機とよばれた機台付腰=機いざり機は現在、結城紬などの一部でしか使われていません。
経糸を腰に結び、自分の人体を機の一部として織る腰機は環太平洋地域に昔から存在しました。
この腰機に機台をつけて能率と品質向上を図るためにフレームを作ったものを機台腰機、もしくは天秤腰機といいます。
日本、朝鮮、中国に見られるものです。
腰機プロジェクトについてはこちら→

ープロジェクト発足の経緯ー
青森県津軽地方の民族資料の収集、そして Boro(襤褸)を世界に発信したことで有名な田中忠三郎氏。氏は生前コレクションを郊外の倉庫に分類して保管していたが、晩年、その倉庫が雪で潰れてしまったので、青森市の廃校になった幼稚園を有償で借り受け保管場所を移した。
雪での損傷は大きく、機や機料など、散逸してしまったものも多い。
2020年保管場所の幼稚園の売却、取り壊しが決まったので、青森市から保管品の移設を求められた。しかし青森県の文化財も多く含まれるのにも関わらず、青森県には保管場所が無く、これらのコレクション、文化財は廃棄焼却処分になる恐れがあった。
そこで自然布研究家、安間信裕氏が織り機の引受を申し出、遺族、管理者との話しあいで、約100台の内、腰機約70台、その他機料などを自社の倉庫に移設した。
なおこの移設保管は安間氏の篤志をもって行われた。
移設に前もって古代織連絡会事務局長(大井川葛布織元)の村井龍彦氏が織り機、機料の調査を行い、今後使えるものを選定した。
2021年 2月 青森県の文化財指定から正式に外れた。




場 所: 人といのちの自然学校 熊野蘇和家
(三重県熊野市神川町長原63番地)
開催日:①令和7年 4月 5日〜 8日(土〜火)
②令和8年 3月28日〜31日(土〜火)
①、②共に、1日目か3日目を含め4日間の中の2日以上ご参加ください。
3日以上ご参加の方は、3日目のオリエンテーションや機の説明を受けていただく必要はありません。
終日織り体験をしていただけます。
スケジュール:
1・3日目:10:00 集合
10:00~10:30 オリエンテーション
10:30~12:00 機の説明
昼食
13:00~17:00 織り体験
2・4日目:9:00 集合
9:00~12:00 織り体験
昼食
13:00~17:00 織り体験
募 集:①②共に各5名
参加費:1日につき12000円(薬膳ランチ付き)
熊野蘇和家に宿泊の方は、1泊2食6000円
機織り部屋に素泊まりも可能です。1泊2500円
前泊のご希望や朝食が不要な方は遠慮なくお知らせください。
※ コンビニやスーパーは車で25分の熊野市街まで行かなければありません。
2.ベンガラ染めワークショップ
ベンガラは土から取れる成分(酸化鉄)で紅殻、弁柄とも呼ばれ語源はインドのベンガル地方より伝来したことからそう呼ばれています。
日本の暮らしに古くから根付いている素材で陶器や漆器、また防虫、防腐の機能性から家屋のベンガラ塗りとして使用されてきました。ラスコーやアルタミラの洞窟壁画にもみられ旧石器時代から使われた最古の顔料であり古代色です。経年変化に強く、日光による褪色がないことも特徴で、昨今では無害であることから天然素材として見直され、繊維製品への染色、オーガニック製品にも使用されるようになりました。
地球上に一番多く存在する「赤色」は酸化鉄といわれています。人類にとって身近な色であり、土から取れた古代色「ベンガラ」は大地の色であり日本の暮らしを彩る色なのです。

場 所: 人といのちの自然学校 熊野蘇和家
(三重県熊野市神川町長原63番地)
開催日:①令和 7年 10月 19日(日)
②令和 8年 3月 22日(日)
*①、②共に、午前、午後の2部制になっています。
午前の部、午後の部のいずれかを選択してください。
スケジュール:
午前の部 10:00 集合
10:00~10:30 オリエンテーション
10:30~12:00 染め体験
午後の部 13:30 集合
13:30~14:00 オリエンテーション
14:00~15:30 染め体験
募 集:①②共に午前の部・午後の部 各10名
参加費:半日につき3000円(薬膳おやつ付き)
宿泊施設をお探しの方は熊野蘇和家に宿泊も可能です。1泊2食6000円
寝袋ご持参の方は機織り部屋に素泊まりもできます。1泊2500円
前泊のご希望や朝食が不要などお気軽にご相談ください。
※ コンビニやスーパーは車で25分の熊野市街まで行かなければありません。




コラム:経皮吸収とは
皮膚を通して物質や薬効を取り込むことで、化粧品や医薬品のみならず衣服からも何らかの物質を取り込んでいます。しかし、その中に体に悪影響を及ぼす物質が含まれていると、それらも皮膚から体内に侵入する可能性があります。
化粧品や医薬品のみならず、洗剤や香料、衣服を染めている染料なども皮膚から吸収されることがわかっています。
ところが、それらの原材料の多くは化学合成されたものがほとんどです。化粧品や医薬品は使わないという選択ができますが、衣服については着ないという選択ができません。安全な衣服をと探しても、商品も少なくとても高価です。安くてオシャレな服を指向していった結果、日本が誇っていた質の高い国産の生地で作った衣服は一般の市場から姿を消してしまいました。
そこで、せめて経皮吸収率の高い身体の部位に触れる下着や肌着を手作りしたり、安全な染料であるベンガラで染めたり、、自分や家族の健康を衣服で守ろう!というのがこのワークショップの目指すところです。