趣 意
医療の担い手として、長年、患者や家族のケアに携わってきたことで、生命の誕生から今に至る連綿とつながった「今を生きるいのち」がいかに奇跡であるかを知りました。
また、いきいきと生きたいのちが、死によって次の世代に受け継がれれば、それは温かい灯となって次の世代の足元を照らすということも確信しました。
これらを「いのちのバトンリレー」とするならば、これにより、無縁社会、虐待、といった不幸な出来事もかならずや減ってくるでしょう。母親は子を産んだらすぐ子育てを始めるのが動物界の自然であり、また、苦しい介護をしたからこそ家族の死や介護の意味を受け入れ、乗り越え、その後の人生が輝くことも、家族を見送った多くの方から教わりました。
ところが、その当たり前の「バトンリレー」が難しい社会になってきています。
大事ないのちのバトンリレーを医療に任せることで起こっている問題は、人の在り様のみならず、社会の仕組みをも揺るがしかねない大きな危機的要素を孕んでいます。
医療技術の進歩や保険制度の充実により、わが国はまれにみる長寿国になりました。
しかし、現実には有病率が下がったわけではなく、老いをも病として医療が診るようになってきた結果、「病気」を持ちながら長生きしているのが現状です。
誰もが平等に最高の医療が受けられることは、日本が世界に誇れる素晴らしい仕組みです。
ところがその仕組みがもたらしたのは、医療への誘導と結果としての依存でした。
人の生活から発生してくる病を医療だけで解決しようとすることで、そのひずみが様々な問題を引き起こしています。
これらの問題は、医療行政や医療を提供する側の問題と捉えられがちで、意思決定支援や受け手とのよりよい関係構築に解決策を見出そうとしているのが医療側の思いです。
しかし、その受け手である医療を利用する側にも、持ち主として主体的にいのちに向き合おうとする姿勢が必要なのではないでしょうか。
残念ながら、既存の教育は、この問題やひずみの根本に着目しておらず、医療が人々の生活の質を高められるようなあり方に方向転換することはおそらく不可能でしょう。また、いのちの持ち主が「いきもの感覚」を取り戻し、自然治癒力への基本的な信頼を育むことができるような情報提供や体験の場は、医療とは隔たりのあるものとして同一線上では語られてきませんでした。
生態系の頂点に立つ「人」が自然の仕組みを知ることで、人と自然はもとより、医療と患者とのよりよいパートナーシップの再構築に寄与でき、さらに「人とのつながり」の中で育ちあえれば、必ずや社会の再生につながる、と確信しています。
そこで、このたび、「自然の一部である人」を知り、「自然そのものである人」に気づくために、学び合い育ち合える場をつくりました。人という、一括りで解釈できない不確かな生き物をどう感じ、どう受け入れ、どう生きていくかを、自然の中の一構成員という視点でみつめることを狙いとするため、いままで専門職を育成してきた「科学的根拠」という視点はここでは重視しません。
すべて自然の仕組みに習い、触れ、感じ、癒されるプログラムになっています。
いのちが調和する社会をめざして、令和元年4月、法人名と同じ名称をもつ、講座「人といのちの自然学校」を開講しました。
いのち輝く豊かな未来への一歩を、みなさんと一緒に踏み出したい!
育ちあう場、人といのちの自然学校でお待ちしています。
実施校
大阪校
大阪城の緑が窓に広がる明るく解放的なセミナールームです。
「いのち」をテーマに素晴らしい講師をお招きしてのセミナーを重ねてきた人といのちの自然学校開設当初からの活動拠点です。
熊野校
令和4年4月に開校した、三重県熊野市の拠点です。
高齢化が進み、空き家が増える熊野市神川町の築100年の古民家、それが循環調和、協働をテーマにした「熊野蘇和家」です。
日本の風土に育まれた文化伝統を取り戻す活動を柱に、貧困や格差の解決策の一つとしての自給、文化伝統の継承を通じた地域社会の再構築、そして、人の健康を衣食住を通して提案していきます。